音色について思うこと



 大学に入って、JAZZ研究会に入って、一年と半年を数えました。
ジャズを本気でやり始めて、色々と思ったことがあります。
一番思ったのが、サックスって芸の広い楽器だなぁ、ということでした。

 ついこの間、ジャズ・サクソフォン奏者のリッチー・コール氏のクリニックに行ってきました。
そこで、リッチーさんが同じ事を仰っていたので、そのことも踏まえながら、この稿を書きたいと思います。


 今回、この稿を書こうと思ったきっかけは、久しぶりにクラシックを聴こうと思い、CDラックを漁ったのがきっかけでした。
その中で目に入ったのが、かのトルヴェール・カルテットのベスト盤でした。
トルヴェールといえば、oleoなどのジャズの曲もよくやっておられる、柔軟性の高い方々だと思います。

 しかし、普段聴く音楽の大部分がジャズを占める生活になってくると、やはり、彼らの演奏は『クラシックタッチでのジャズ』と聞こえてきます。

 誤解をなさらないでください。僕は否定するつもりはありません。
寧ろ、ジャンルを飛び越えようとする彼らの考え方は好きですし、演奏も好きです。
あくまで『音色』ということに重点を置いているため、このような書き方になってしまっただけです。

 では、サックスの音色というものを考えてみたいと思います。
が、その前に、思い浮かぶだけのサックスの音色を挙げてみましょう。

 まず大きく分けて。
1:吹奏楽やサクソフォン・カルテットなどを中心とした、クラシカルな音色
2:4ビートなどで良く聞く、ジャジーな音色
3:フュージョン、ファンクや8・16ビートの様な、硬質な堅い音色
ざっと思い浮かぶのはこれらの3つです。

 失礼かもしれませんが、この中で、ある意味一番違いがわかりにくいのは、クラシカルな音色でしょう。
勿論、サックス奏者や聞き慣れた人には、大きな違いとして聞こえますが、普段クラシックを聴かない人は、ジャズのプレイヤー毎ほどの大きな違い(特にコンボ)は出ないのではないでしょうか?
 これはサックスに限らず、クラシック、特にオーケストラやオペラなどでは大いにある事であると思います。

 では何故、『それほど大きな違い』というものが出ないのでしょうか?
個人的見解ですが、それはクラシックというものの性質が絡んで来るのではないでしょうか?
特にオーケストラではそうですが、クラシックは他の楽器と響きが混じり合うことが第一と考えられる風潮があります。
音程は当然、アタック、ニュアンス、強弱、余韻。
それらを周りと混じり合わせる事は、当然ながらある程度、個を消さなくてはなりません。
 オーケストラや吹奏楽の場合、「〜〜が在籍してる」という時はあっても、「(個人名)のサウンドが良い」と評価するのはまず無いのではないでしょうか?
それは、吹奏楽やオーケストラその物が持っている、全体としての個性が強調されるから、だと思います。
これは、アンサンブル部分だけで言えば、ビッグバンドもさほど変わらないのでしょうが。
 そして、クラシックは、ジャズのような濁った人情味溢れる様な音というよりも、独自の澄んだ音色を追求しようとした結果が、クラシックサックスで良く聞かれる音色なのでしょう。

 では、4ビート系のジャズの音色はどうでしょうか?
これも、時代やスタイルによって様々なパターンがあります。

 例えば、古くはレスター・ヤングやコールマン・ホーキンス、最近ではスコット・ハミルトンやハリー・アレンのに代表される、スウィングジャズの音色。
スタン・ゲッツやアート・ペッパーの様なウェストコーストに見られる、柔らかい音色。
コルトレーンやファラオ・サンダースのような硬質な音色。
はたまた、ポール・デスモンドの様なクラシック的な音色。

 この様に、ジャズは様々な音色があります。
特に比較的テナーは、アルトと比べると、一音耳にしただけでプレイヤーがわかることもままあるほど、プレイヤー間の差は大きいです。

 これは、ジャズメンの頭の中にある『格好良い音色』が、比較的大きな幅で作られているからだと思います。
特にコンボなどでは、個性と個性のぶつかり合いが起きているといっても良いくらい、個性が重要視されます。
ビッグバンドのサックス・セクションでも、プレイヤー毎に音色が全然違うというのも珍しくありません
これが、ジャズの多彩な音色を形作る要因ではないでしょうか?



 そして、3つめのファンクやフュージョンなどで聞かれる音色について。

有名どころならば、ボブ・ミンツァーやディビッド・サンボーン、マイケル・ブレッカー等、日本人ならばMALTAさんや伊東たけしさんですね。

これらの音色で特徴的なのは、どこか堅い、乾いた感じがあることでしょう。
こういった音色を使うプレイヤーは、マウスピースがデュコフやガーデラ、ARBなどを使っておられる方が多いです。
ポップスで良く聞かれるサックスの音色、といえばイメージが掴みやすいでしょうか。
このジャンルの人はスタジオミュージシャンなどでよく見られ、総じてテクニックが凄い人が多いです。



 さて、大まかに出た所で、僕が一番思うことをまず書きたいと思います。
それは、音色は自分の物だ、ということ。
何をバカな、とおっしゃる方がおられるかもしれません。

しかし、きちんと理由があります。

 たまに勘違いしている人がいるからここに書こうと思います。
マウスピースは、自分の出したい音色を出す手助けであって、マウスピースがその音色を出すわけではない、ということです。

 どう言うことかというと、マウスピースは、自分の出したい音を楽に出させる為のツールで、マウスピースによって音が作られているのではない、ということです。
 もう少し詳しく言うと、例えば、セルマーのS90/180を使って、マイケル・ブレッカーの様な音を出そうと思うと、その音を出す、と言う点で多大な労力を強いられますよね?
 しかし、そこでデュコフやガーデラ等のマッピを使っていれば、それだけ近い音は出しやすく、その分プレイに集中できますよね。

 ですから僕は、自分の出したい音色が一番出しやすいマウスピースを使うべきだと思います。
 (勿論、使われるのはそれなりの理由があるのですが)ある程度楽器に慣れてきた人は、是非とも、自分が出したい音を出しやすいマウスピースを使って欲しいと思います。
 そしてもう一つ、マウスピースを変えても、自分の本質的な音色は変わらない、と言うことも覚えておいて欲しいと思います。
開きや材質が変われば当然吹き易さが変わってきます。
息の取られる量なども変わってくるでしょう。
しかし、実際に出している音は、そう大差ないのではないでしょうか。

 録音したものを聞き比べて見れば分かります。
それに、例えばコルトレーンやハンク・モブレー、ジョー・ヘンダーソンからハリー・アレンまで、全員オットーリンク使いです。
ですが、これらの人々の音色は全く違う物ですよね?
これは自分のアンブシュアや体格、息の入れ方などが違う物だからだと思います。

 ですから、そのマウスピースの特徴を掴む為にも、取っ替え引っ替えマウスピースを変えるのは止めた方が良いのではないか、と思います。
勿論、リードミスがでまくるとかは問題ですし、同じマウスピースに固執してしまうのも問題かもしれません。
 ですが、マウスピースをころころ変えることは、アンブシュアを崩しかねないですし、マウスピースに頼ってしまい、自分の出したい音を自分で求める事を忘れかねません。  ですから、マウスピースを決めたら、暫くの間、少なくとも口が馴染んで、性格が分かってくる位までは同じのを使い続けた方が良いのでは、と思います。 それくらいまで使えば、そのマウスピースの特徴的な音が出るのではないか、と。

 当然ながら、これは一アマチュアである僕の主観であり、それは違う、という方もいらっしゃるでしょう。
当然ですが、それはそれで良いのだと思います。やり方なんか人それぞれですから。
僕は主観を書かせてもらってるだけですからね。



 そして、これはある意味一番書きたかったことです。
それは結局の所、サックスって芸が広いなぁという賛歌になるんですが(笑)
 今まで書いたことは全て、サクソフォンという同じ楽器から出ている音色なんですよね。
そして同じセッティングでも、ジャジーな音色からクラシカルな音色まで幅広くだせます。
 僕は今、ジャズをやる時はヤナギサワラバーの8番を使っていますが、息の入れ方を少し変えるだけで、クラシカルな音色もある程度出せます。
というか、この間高校の後輩の練習を見に行ったときにやってましたし。

 ですから結局の所、音色というのはイメージの持ちようで変わってくる物なのかなぁと思います。
今でもクラシカルな音色を出せるのは、中学・高校とやってきたイメージがあるから、それを引っぱり出してくれば良いだけの話ですから。

 それに、例えばアルモ・サクソフォン・カルテットのソプラノ奏者、中村氏の様に、独特かつクラシカルな音色を持った人もいらっしゃいますし、ブランフォード・マルサリスの様に両方の音色をきっちり使い分けられる人もいます。

 しかし冷静に考えると、豊かな音というと、倍音を多く含んだ伸びやかな音でしょうし、とすればジャズもクラシックも変わらないんですよね。
雑味を強調するか、澄んだ音色を求めるか、の違いなんですし。
それを考えると、やはり芸の広い楽器だなぁと感じます。

 ですから尚更、イメージをすることが大切なのだとも思います。

 結局、ジャズにしろクラシックにしろ、自分が出したい音、真似したい音を見つけて、そのイメージを育てていくことが、結局は自分の音色というものを見つける最短な道なのかもしれないですね。




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