書き出しいきなりから何ですが、注意点があったりします。
これは、実際今までフラジオがほぼ全く出なかった僕が、急に出るようになった時の事を思い出して書いてます。ですから、時間はかかるかもしれませんが、フラジオは出る様になるかもしれません。
ですが、忘れないでいて欲しいのは、何故フラジオを使うのかということです。あくまでフラジオは表現の一手段であって、フラジオを出すのを目的とするのは本末転倒というものです。
ですから、何故フラジオを出したいのか、その事を意識した上で、練習していただければ、と思います。
あと当然ですが、僕はアマチュアですから、使いこなせるワケではありません。あくまで『僕が出た時の様子』と『出しやすくするアドバイス』です。
あと、この文章の中では、Oct.がオクターブキー、1, 2, 3, 4, 5, 6がそれぞれ左手の人差し指、中指、薬指、右手の人差し指、中指、薬指を示します。サイド等その他のキーは、僕がよく使う、一般的な呼び方で書きます。
それでは本題・・・に入る前にもう少し。
サックスに限らず、楽器の音色に倍音が含まれている、というのは周知の事だと思います。そして、サックスの場合、一番下のシ♭から中音域のド#までが、その倍音列の中で一番下の音、基音です。
それ以上の音は、全て基音からの倍音で構成されているというわけですね。例えば、始めたばかりの時、Oct, 1, 2, 3のソを出そうとして下のソが出たり、低音域、例えば下のドを出そうとして、中音域のドやその上のソが出た事があるかと思います。その時、前者の指でミが出たとか、後者の指でラが出たとかはまず無いと思います。それが、サックスの音は倍音で構成されている、という証明になります。余談ですが、クラリネットの指遣いが複雑なのも、この倍音のせいです。
そして、フラジオも例外ではありません。つまり、フラジオは倍音の高い部分を強調した音なのです。ですから、倍音の吹き分けの練習が有効なワケですね。
いわゆるオーバートーンというやつです。
あれは、同じ指遣いのまま息の勢いや舌の位置を調節することで、高次の倍音を出しているわけです。そうやって倍音を吹き分ける感覚を身に付ける為の練習ですね。他にも、塞いでる穴の数が多い=倍音が豊か、ということですから、通常の指遣いの音をオーバートーン時の音に近づける事で、結果的に倍音を豊かに得られる、といった効果もあります。
まあ、きちんと意識して練習しないと、これも『高い倍音を出すのが目的』になりがちですが。まあ、かなりハードルが高いんで仕方がないんですけど。僕も一時期その沼にはまってましたから。
僕も苦手なのでコツらしきコツもないんですが・・・噛まないこと、これは最低条件ですね。
不必要に噛んでしまうと、それだけ響きが窮屈になってしまい、音としての魅力が無くなってしまいますから。これはクラシックでもジャズでも同じだと思います。
アンブシュアの締める力は変えず、喉仏の開きを変えるのがコツといえばコツかもしれません。歌うときでも、高音域だと喉が狭くなりますよね?それと同じです。
正直なところ、最低音のシ♭指遣いで第三倍音、通常の指だとOct.,1,bisのシ♭の音がある程度出る様になれば、フラジオは出せると思います。
あと、Front F, 2, 3を使った、高音のミや、Front F, 2の高音のファを出せる様にしましょう。勿論、いきなり吹きのばしで出せるように。後者は結構簡単ですが、前者はコツを掴むまで案外難しいものです。慣れるまでは、ファからミに降りて伸ばす、を繰り返しても良いかもしれません。
これらが出来るようになれば、ファの指にTa、又は High F# キーを足して、ファ#を一発で出せる様に練習しましょう。
これも、実はフラジオに分類されます。出せる様になれば分かりますが、響きの感じはいわゆるフラジオと良く似ています。
これも、倍音の調節という点で有効です。というか、こっちの方が簡単なので、こっちを先にやった方が良いかもしれません。
さて。
ここまでは、練習方法を須川展也氏の書かれた本で知っている方もいらっしゃるかもしれません。コレを書く際には参考にさせていただきました。ですが、僕がフラジオが出せる様になったのは、コレを知ってから丸々4年から5年かかっています。
ちょうど出せる様になる直前、ちょっと大きなイベントに出ました。
トップでも告知させて頂いてますが、Jazz Party 2006 というイベントの大阪エリア代表として実行委員をさせて貰っています。それの2005年度版、僕はスタッフとして働きながら、最後のセッションに出ました。で、管楽器がテナー・サックス3本でテナー・マッドネスというブルースをしました。
その時の、僕の前にソロを取った人が、フュージョン系の音色で、バリバリにフラジオを使っておられました。僕は古いスタイルを目指してるのでその後のソロがやりにくかったのですが(笑)、まあそれは置いておいて。
その人がまた太くて良い音なんですよ。僕が出したいのとは違うスタイルでも、やっぱり触発されるものがありまして。
それが終わってから、ロングトーンの練習をかなり真面目にするようになりました。少しでも豊かな音を、少しでも太い音を目指して。
しばらくして、セッションの時に遊びでラを吹こうとしたら、至極あっさりと出たんですよ。それまで、か細いソが限界だったのに。
で、ふと気付いたんです。
倍音をたくさん含んでいないと、強調するにもしようがないということを。
ですから、か細い音でしかフラジオを出せない人や、フラジオがなかなか出ない人は、まず、普段の音を良くする練習をするのが先なのではないでしょうか?
クラシックの初心者でいる様な、入れる息の量を減らして、余分な倍音を消して小綺麗にまとめた様な音でなく、まずは豊かな倍音を含んだ音を出せるようになり、そこからコントロールを求めていった方が良いのではないでしょうか?
実際問題、僕もフレーズ内で使える様なフラジオはラだけですし、それも一瞬間が空いてしまいますから、殆ど使いません。無理矢理ならその上のミ♭まで出ますが、もういかにも初心者のフラジオ!って感じのか細い、超音波みたいな音しかなりません。
ですが、普段の音色を意識するまでは、ラはおろか、Oct.と左手のサイドキーを使ったファすらミスる時があった位です。一度回り道してみて、普段の音色を見直してみるのも良いかもしれませんね。
ですが、これだけで放っておいたらせっかく読んで頂いた方に失礼かもしれませんから、無理矢理出すコツみたいなのをちょっと(笑)
ただ、この方法に頼って出すと貧弱な音しかなりません、というかぶっちゃけ歯形付いて下手したら出血しますから、満足したらきっちり練習してくださいねw
あんまりやりすぎるとアンブシュアを壊してしまう可能性もありますので、その辺は自己責任でw
それで、やり方なんですが。
普段のアンブシュアでマウスピースをくわえます。
で、下顎を前に押し出します。ちょうど志村けんの「アイーン」みたいな感じ。すると、当然ですが、下の歯が随分前に出ますよね?
ここまでは、少しだけの変化ならフラジオ出すときにジャズだとプロでもやる人がいてます。というか、喉を変化させた結果、ちょっと下顎が前に動いてしまうんですが。
ただ、ちょっとじゃなくて結構前にして、そのまま若干噛みます(笑)
で、後は頭の中でラの音を思い浮かべながら、Oct, 2, 3( 4, 5, 6を足した方がいい人もいます)のキーを押さえて思いっ切り吹きます。
個人的にラが一番出しやすいと思います。僕はテナーなのでラが出やすいだけかもしれません。
あと、もう一つ。こちらは別段アンブシュアを弄る必要もありません。
Oct, Front F, 2, ta キーでファ#を出します。そして、そのまま伸ばして、出来るだけ一瞬でOct, 1, ta, High F#(半開き)にすると、ソが出ます。コレはテナー用。
アルトだと、変えた後の指にbisを足しましょう。
何回かチャレンジしてフラジオを出してしまえば、あとは練習次第でラとかも案外簡単に出せるかもしれません。というか後輩が出してました。
ただ、これと上の出し方を併用すると、テナーだとレが出ます。こうなると、何故か中々ソが出なくなるので要注意(実体験)。
最後に、何故フラジオが使いたいと思ったか、ですね。
やる譜面に出てくる、フラジオを使って格好良いフレーズを組み立てたい。後輩に自慢したい、というのもある意味立派な動機です。
ですから、ただ漫然と出したいと思うのではなく、動機付けをすること。フラジオに限らず、それは上達する上で有用なものとなります。
ロングトーンを、ただ日々の日課だから、とダラーっとやるのではなく、音程のふらつきを無くすため、ギリギリまで安定して息を吹き込める様になるため、ピアニシモでも遠鳴りする音を目指すため、様々な課題が考えられます。
スケール、アルペジオ、半音階、曲練習、なんでもそうです。
『フラジオを出す』という目的の為でなく、『フラジオを使ってする何か』という目的をハッキリと持つこと。
それが、フラジオを出す一番のコツなのかもしれません。